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    『生と死のミニア・コンガ』

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       先日岩波ホールで映画に行った折、山岳書を扱う古本屋「悠久堂」で偶然に見つけた。2000年に出版された、山岳遭難をドキュメンタリー風に書き下ろした秀逸の書籍で、一気に読み終えました。山の遭難を扱った本は結構読んでいますが、実際の話なので、臨場感に満ちた作品となっています。




       1981年春、北海道山岳連盟の登山隊が中国西部の最高峰ミニア・コンガに遠征する。23名の全員が登頂するという方針の下にBCを築き、C1からC5までのチャンプを重ね、1次隊2次隊と北東稜のアタックを仕掛ける、著者は1次隊12名に属し共に行動することになる。


       しかし、高所登山の経験の浅い隊員達は高度障害に悩まされ、思うように高度を稼げず頂上直下で、一人の隊員が滑落してしまい、最初の尊い命が奪われる。隊への痛手は大きく、登頂を諦め一転して過酷な退却を強いられる、強風と降雪、そしてホワイトアウトで下降にも大きな危険が待ち構えていた。


       1本のロープに7人がアンザイレインで繋がっての下降で、2回目のアクシデントが発生し著者を残して7人が数珠繋ぎになって北壁の谷へ転落していく。著者は偶然にもアンザイレインに手間取ってロープに入れず、滑落していく7人を呆然と見送るだけで、7人を止める手立てはありません。



       取り残された著者にも1人での下降に危険が待ちうけ、クレバスに落ちて死を覚悟するが、奇跡的に、副隊長に助けられる。そして九死に一生を得て、C5に戻ってきます。そこから著者の死者たちへの弔いと、自分が生かされている意味を考える実話が綴られていきます。


       ミニア・コンガに纏わる逸話は続きます、その翌年今度は千葉・市川山岳会のメンバー2人が遭難し、その内1人が19日間さ迷いながらも奇跡の生還を果たし、社会的な反響を呼びました。また94年には著者と一緒に雪崩の研究をしていた登山家が、再び4人の隊員と共に雪稜に消えてゆく。


       しかも4名の登山隊は登山中偶然81年の北海道隊の遺体を発見していたのでした。不思議な巡り会わせで、その後著者は遺体の収容と云う困難な問題に向き合うことになります。遺族の悲しみと向き合い、生と死の意味に付いて思いを深めていく。


       この本を読んでいて決して、山で死んではいけないと思いました。山岳遭難とくに海外の高所登山では、遺体を発見することも収容することも難しく、遺族の悲しみや苦しみは長きに渡ります、そしてやり場のない苦しみを抱えながら生きていかなければ成りません。


       最後の章で著者は遺体の収容と、遺族を伴って慰霊の旅に出かけます。登山の基地の寺院に埋葬し、レリーフを建立して遭難者に霊に祈りを捧げます。そしてこの慰霊碑に別れを告げる時の遺族の悲しみに思わず涙してしまいました。


       幼いころから慈しんで、愛情いっぱいに育て、立派な青年に成長して、これから家族の働き頭として見守っていた1人息子を、山の遭難事故と云う形で失った喪失感は計り知れません。レリーフにしがみ付き嗚咽する姿に掛ける言葉はありません。
       

       そしてこの亡くなった一人息子の人とは、実は私の山ノ神の実家、近くに住む従兄弟の息子さんだったのです。生きていれば帰省の再に山のお話も出来たのに、とても残念で成りません。昨年帰省した際にもお話し、その穏やかな話し方がとても印象的でした。

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